世界的に有名な事件 切り裂きジャック:ジャック・ザ・リパー事件 新情報が出た後も、依然として解明されていないと言われ続けている事件 この事件が解明される時は来るのか? 正体が解明されないからこそ、今でも現場ツアーが開催されるほどの人気を誇っているのか?
ジャック・ザ・リパー(切り裂きジャック)事件とは、1888年にイギリスで発生した娼婦連続殺人事件です。多くの犯行がロンドンのホワイトチャペルで行われたため「ホワイトチャペルマーダー」とも呼ばれています
多くの被疑者がいますが、どれも犯人と断定できる決定的な証拠はなく、また、事件から100年以上が経過しているため真犯人はすでに死去している可能性が非常に高く、永遠の未解決事件となっています
ジャックとは、日本でいう「名無しのゴンベエ」であり、未解決の事件でその犯人を指す場合に「ジャック・ザ・○○」と呼ばれています
最初の(?)被害者
1888年8月31日未明、ロンドンのホワイトチャペルを巡回していた警官が倒れている女性を発見しました。女性は喉を切り裂かれており、他にも無数の刺し傷がありすでに死亡していました
彼女はメアリー・アン・ニコルズというこの界隈では有名な娼婦で、物を取られた形跡はなく、彼女を凌辱する殺し方であったため、怨恨、もしくは快楽殺人として捜査が開始されました。
切り裂きジャックとおぼしき犯行がこの事件以前にもあるため、これがいわゆる「最初」の犯行であるかはわかっていません
アニー・チャップマン
ニコルズの事件から10日ほどたった9月8日、第二の被害者が発見されました
彼女はアニー・チャップマンという娼婦で、下半身が切り裂かれ、臓器の一部が持ち去られるというニコルズよりもさらに陵辱的な殺され方をしていました
これにより、警察は個人的な怨恨ではなく、娼婦を狙った快楽殺人としての捜査を進めていきます
犯人からの手紙
9月25日、犯人と思われる人物からの手紙がセントラル・ニューズ・エージェンシーという新聞社に届きました
手紙には「売春婦が嫌いだ」「まだまだ犯行を続ける」「警察には絶対に捕まらない」といった内容が書かれていました
この一件を新聞で報道したことにより切り裂きジャックからの手紙が毎日20通も届くようになってしまい、ただのいたずらと犯人の犯行声明の区別がつかなくなってしまいました
しかし、最初の一通は犯人の物である可能性が非常に高いため、筆跡鑑定などの捜査に役に立つこととなりました
手紙から5日後
9月30日には2人の被害者がでてしまいます
1人は午前1時頃に発見されたエリザベス・ストライドという娼婦であり、この一連の殺人事件で唯一犯人が目撃されています。それが原因なのか、ストライドは身体の一部を持ち去られていませんでした
もう1人はホワイトチャペルより少し離れたシティ・オブ・ロンドンで午前2時頃に発見されたキャサリン・エドウッズという娼婦でした
エドウッズの殺害現場は凄惨の一言であり、身体の一部も持ち去られており、さらに、取り出された臓器が遺体のそばに並べられていました
エドウッズの殺害現場
エドウッズ殺害時、現場付近を捜査していた1人の警官が、現場から少し離れた場所で血の付いた布を発見しました
この布は、後にエドウッズの着衣の一部であることがわかり、その布が落ちていた近くの壁には「ユダヤ人は理由もなく責められる人たちではない」
という犯人が書いたと思われる落書きが書かれていました
現代になり、このエドウッズの布が事件の展開を、大きく進展させることとなります
メアリー・ジェイン・ケリー
11月9日、メアリー・ジェイン・ケリーという娼婦が遺体で発見されました
ケリーの殺害現場は一連の事件で最も凄惨で、身体の中も外も関係なく言葉通りバラバラにされていました。さらに、彼女の死は、一連の切り裂きジャック事件の謎を深める最も重要な死でもありました
この事件を境に切り裂きジャックの犯行はなくなります
その後、何人もの被疑者が挙がりましたが決定的な証拠はなく、様々な憶測がされ、未解決事件史上最も有名な事件として今なお語り継がれることとなります
ケリー殺害の謎
ケリーの遺体はあまりにも凄惨で、だれなのか判別できるようなものではありませんでした
しかし、医学的には「最も高度な外科手術的殺人」であったと言われています
また、殺害現場がケリーの自宅であり、その後、彼女がいなくなったため被害者は彼女であるとされましたが、実際にケリーであったことを断定する科学的な根拠はないとされています
さらに、ケリー以外の被害者は40歳以上の女性でしたが、彼女だけ25歳であったこと、犯行現場が他の被害者と違って彼女の自宅であったこと、ケリーは娼婦と発表されているが、実際には娼婦でなかったとする説など、他の事件との不審な相違点があります
そのため、ケリー殺害は切り裂きジャックの犯行と見せかけた別の事件、それもなにかしらの形で警察が関与し情報操作を行った事件なのではないかとする説も存在しています
ホワイトホール・ミステリー
前述の5人が切り裂きジャックの犯行と断定された事件ですが、1888年前後にはその他にも多くの未解決殺人事件が起きています
その中でもホワイトホール・ミステリーと呼ばれる殺人事件は、時期的に切り裂きジャック事件と被るため同一犯の仕業ではないかと言われています
ただし、切り裂きジャックは首を切り裂くのが特徴であり、ホワイトホール・ミステリーでは被害者はバラバラにされています
※この時期のロンドン界隈では、女性を対象にした未解決の殺人及び殺人未遂事件が20件以上発生しています。切り裂きジャック以外にも複数の猟奇殺人犯が一般市民に紛れて生活していたということとなります
医師:マイケル・オストゥログ
切り裂きジャック事件の凶器は、メスのような鋭利な刃物であり、臓器の摘出などが正確に行われていたため解剖学の知識を持った医師や精肉業者であるとプロファイリングされました
マイケル・オストゥログはロシア人医師で、殺人の前科があり、ホワイトチャペルでの事件時に所在が不明であったことから有力な被疑者とされました
医師:トマス・ニール・クリーム
ストリキニーネという薬物で売春婦を毒殺した通称「ランベスの毒殺魔」
1892年に彼の死刑執行が行われる際、絞首台において「自分が切り裂きジャックだ」と言い残したとされています
しかし、切り裂きジャック事件時、彼はアメリカの刑務所に投獄されていたため、犯行を行うことはできるはずもありませんでした
不審死を遂げた被疑者
事件当時の捜査責任者であったメルヴィル・マクノートンのメモにより20世紀に入ってから有力な被疑者とされた弁護士、モンタギュー・ジャン・ドゥルイト
彼は、第1、第2の事件の際に所在がわかっておらず、目撃証言と類似する風貌をもっていました。また、何かしらの精神病を患っていたとされ、第5の事件から約1ヶ月後にテムズ川に飛び込み自殺しています
彼の精神が罪の意識に耐え切れなくなったため自ら命を絶ったのではないかと言われています
しかし、マクノートンのメモは、ドゥルイトの職業を誤って医師と記述しているなど間違いが多いため、どこまで正確なのか信憑性が疑われています
売春婦を憎んでいた被疑者
アーロン・コスミンスキーは殺害現場の近辺に住んでおり、売春婦を憎んでいたとされています
目撃者の証言により逮捕されましたが、重度の精神錯乱が見られ、切り裂きジャックの手紙の筆跡と一致しなかったため釈放されました
また、後に目撃者の証言も撤回されています
切り裂きジャックの日記
1991年、「身体の一部を持ち帰り食した」などの記述がされている切り裂きジャックの物と思われる日記が発見されました。これにより、その持ち主であるジェイムズ・メイブリクが被疑者として有力視されることとなりました
一連の事件が起こる3週間前に現場付近に部屋を借りており、「金色の口髭」という目撃証言とも一致しています
しかし、その日記は事件から100年以上経過して発見された物であるため信憑性は疑問視されています
メイブリク自身は1889年に妻に殺害されました
精肉業者:ジェイコブ・リービー
切り裂きジャックの犯人像は「死体の解体に慣れ、血まみれでも怪しまれない」という特徴から精肉業者も疑われました。4人目の犠牲者の現場付近に残っていたユダヤ人を示唆する落書きから犯人はユダヤ人であるとも言われていました
ジェイコブ・リービーは精肉店を営むユダヤ人であり、梅毒を患っており、それによる精神障害により「不道徳な行いをしろ」という幻聴が聞こえていたといわれています
さらに「一晩中町を徘徊していることがあった」とリービーの妻が証言しています
犯行可能範囲内に住んでおり、犯行が止んだ理由は梅毒の症状が進行したため、と言われている非常に有力な被疑者でした
ただし、彼の犯行と言われているのは第4の事件までで、第5の犯行は解剖の手口が違うことなどから別の者の犯行と言われています
その他の犯人像
医師や精肉業者以外にも多くの犯人像が挙げられている
たとえば、深夜でも警官や女性に怪しまれない人物ということから犯人は警官であるとする説、同様の理由から犯人は女性であるとする説、コナン・ドイルは「女装した男性」と推理しており、さらには、当時の女王ヴィクトリアの孫であるクラレンス公アルバート・ヴィクターも容疑者の1人とされた
彼は変装して町に繰り出し娼婦と遊んでいたと言われており、それにより梅毒を患っていたともいわれている
また、第5の被害者であるメアリー・ジェイン・ケリーはクラレンス公の隠し子であり、そのことをケリーが他の娼婦仲間に話したことから殺害された、とする王室主導説まである
ケリーの殺害は他の被害者と多くの相違点があり、警察による情報操作(ケリーの殺害を強引に切り裂きジャックの犯行とした)などから、切り裂きジャックとは別、もしくは切り裂きジャック事件そのものがケリー殺害をカモフラージュするために仕組まれたのではないかという説が根強く残っている
現代科学による最新の情報
Journal of Forensic Sciencesに掲載された法医学調査報告書によると、切り裂きジャックは当時23歳だったポーランド人理髪師アーロン・コスミンスキーであることがわかったと発表されました
今回、犯人割り出しの決め手となったのは、前述の4人目の犠牲者、キャサリン・エドウッズのショールでした。遺体のそばに落ちていたショールに付着した血液と精液を採取し、最新の技術による遺伝子検査を実施。その結果、最も有力とされながらも、あくまで容疑者の一人であったコスミンスキーのデータと合致したとされます
しかし、コスミンスキーの捜査結果である筆跡鑑定の不一致、目撃者の証言が撤回されていること、発表されたDNA検査の鑑定方法、発表の方法、エドウッズのショールの信憑性など多くの不確定要素があり、各方面から批判を浴びています
この発表でも真相解明とは行かなかった切り裂きジャック事件。いつかこの謎が解ける日がくるのでしょうか?
それともこの謎は、謎のままであるからこそ今でも多くの人の注目を浴びているのでしょうか
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